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胃がん

消化器内科医師 内多 訓久

第三内科部長 内多 訓久

 胃がんは、日本人が最も多くかかるがんです。男性の9人に1人、女性の18人に1人が、一生のうちに胃がんと診断されています。現在はがんにおける部位別死因の2位ですが、1998年に肺がんに追い抜かれるまでは部位別死因のトップでした。1年間で42,319人の方が胃がんで亡くなっています。(2020年)
 原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌感染(慢性胃炎)、多量の塩分摂取、喫煙、多量の飲酒などが主なリスク要因と考えられています。

早期に発見できれば「治る」
 最近は胃がんの早期発見の大切さがかなり認知されてきました。外科手術や内視鏡的切除術で胃がんを取り除くことができれば胃がんは治すことができます。
 胃がんは、胃壁の内側にある粘膜、つまり食べたものが接する部分に発生します。内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜の順に、外側に向かってがんが広がっていきます。がん細胞が粘膜または粘膜下層までにとどまっているものを「早期胃がん」といい、固有筋層より深く達したものを「進行胃がん」といいます。

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当院消化器内科における胃がんの治療方針

外科手術は行わず、内視鏡でがんを切除する
早期胃がんのなかでも内視鏡的切除術が可能な場合があり、内視鏡で胃の中からがんを含む粘膜を取り除くことができます。
内視鏡的切除が可能かどうか決めるためには、内視鏡検査が必要です。がんの大きさや範囲、深さ(深達度)、がんの種類(組織型)などを詳しく検査します。これによって治療方針が異なります。
  •  日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン2014年第4版」(金原出版)より
  • 患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版 第3版(金原出版)
    日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂第6版」(金原出版)より
早期胃がんの診断で「拡大内視鏡」が威力を発揮する!
早期胃がんの診断でその威力を発揮するのが「拡大内視鏡」です。
「拡大内視鏡」では、胃粘膜の3mm×3mmの範囲がモニター画面いっぱいになるほどの高倍率で、直径8μm(8/1000ミリ)の毛細血管が1本1本まで観察できます。これにより、がんなのかどうか、大きさや範囲はどれほどか、どのような種類のがんか、などを診断します。当院での拡大内視鏡については後半で詳しく紹介しています。

拡大内視鏡検査とは?
異常が疑われる部位が見つかったとき、当院では拡大内視鏡を使用して精密検査を行います。拡大内視鏡検査とは、観察する部位を約100倍に拡大することで、その部位ががんなのかどうか、またがんであればどの程度広がっているかを評価する検査です。拡大内視鏡のスコープGIF-H260Zを使用して最大倍率に拡大すると、身体の最も細い血管である毛細血管ひとつひとつまではっきりと描出され、また表面の細かな模様(表面の構造)も詳しく観察ができます。胃がんは毛細血管の分布や配列、太さなどが変化し、また表面の構造も乱れてきます。そのわずかな変化を捉えることで、がんの診断と、がんが広がっている範囲の診断を行います。拡大内視鏡が特に威力を発揮するのが、通常の内視鏡観察ではがんと炎症の判断が難しい場合の診断や、がんの場合でも通常の内視鏡観察ではがんと正常部分の境界がわからない広がり方をする胃がんです。拡大観察をすることで、毛細血管と構造の変化を見逃すことなく、正確な範囲診断をすることができます。もしこの診断ができなければ、診断が確定するまで何度も検査をしたり、必要以上に広い範囲の手術が必要となってきます。
先にお話ししたように、胃がんの治療は、内視鏡で治療する場合と外科手術で胃を切除する場合があります。身体にとって最小限の負担で、なおかつがんを残さない安全で確実な治療法を選択するため、拡大内視鏡検査での精密検査が必須といえます。
なお、この拡大内視鏡検査は、検診などで用いられる普通のスコープよりも1mmほど直径が太く、内視鏡検査時の苦痛がやや大きいと感じる方が多いため、基本的には鎮静剤を使って眠った状態で検査を行います。鎮静剤を使うと知らないうちに検査が終わってしまうので楽ですが、呼吸が弱くなったり、検査後も眠気が続くなどの副作用もあるので、検査終了後も1時間ほど回復室で休んでいただきます。

拡大内視鏡ではどんなふうにみえる?
まず、通常の検査と同様に拡大なしで撮影した画像がこちらです。右の写真は青い色素をまいて凸凹を見やすくしています。
  • 通常の画像1
  • 通常の画像2
この写真では、凹凸がほとんどなく、どこが病変かわかりにくいですね。よく見ると、黄色の円の部分にがんの疑いがある小さな変化がみられるのです。しかし、どこからどこまでが異常なのか範囲がはっきり分かりません。この黄色い円の部分を拡大観察してみると、下の画像のように見えます。
  • がんの拡大画像1
  • 画面中央、黄色い点線で囲んだ暗くみえる部分ががんです。毛細血管と表面構造が乱れ、正常な周囲とは明らかな差があります。
  • がんの拡大画像2
  • この画像でも、正常の粘膜と、画面の左下のがんの部分では、境界がはっきり見て取れます。
    通常の内視鏡検査ではわかりにくいがんの症例でしたが、がんの範囲を確実に診断して、内視鏡で切除できました。拡大内視鏡が力を発揮した例です。

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当院消化器内科における胃がん治療の特色

消化器内科医師 小島 康司

消化器内科医師 岩﨑 丈紘

最新の拡大内視鏡を導入しています
最近開発された拡大内視鏡スコープGIF-XZ1200は直径が通常の内視鏡と同じですが、前述の拡大スコープGIF-H260Zと比較して十分な拡大機能を有しています。
このスコープは鎮静剤を使って眠る必要がないため、検診などのスクリーニング検査でも使用でき、病変が見つかった時にその場で拡大検査を追加して行うことができます。


拡大内視鏡検査の診断技術の向上のために
拡大内視鏡検査は非常に有用な検査ですが、拡大内視鏡検査の技術は誰でもすぐに習得できるものではありません。検査者はきれいな画像を撮影する訓練や、正確な診断ができる目を養うことが必要です。
当院では診断技術の向上のために、学会での発表や勉強会を積極的に行っています。また、指導医による若手医師の指導はもちろんのこと、海外の病院でも技術指導にあたるなど、拡大内視鏡検査を行う医師の訓練にも力を入れています。

一番大事なことは、健診をうけること
では、どうしたら胃がんを早期に見つけて治すことができるでしょうか。それは、やはり検査をうけることです。いくら拡大内視鏡が優れていても、検査を受けなければ胃がんを見つけることができません。依然胃がんは日本人には多い疾患ですので、症状あるなしに関わらず定期的な検査は必要です。詳しいことは当院の内科または健診センターへお問い合わせください。

消化器内科医師 岩﨑 丈紘


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