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前立腺がん

前立腺がんについて

 前立腺がんは、本邦において、近年増加しています。「がん情報サービス」の全国がん登録罹患データからは、2018年に男性のがん罹患率 第1位となり(92,021人)、男女合わせても第5位の罹患率となっています(1位:大腸がん 2位胃がん 3位大腸がん 4位乳がん)。また死亡数も、2019年の統計では、12,544人であり、男性のがん死亡実数(2019年1年間)では、1位肺がん、2位胃がん、3位大腸がん、4位すい臓がん、5位肝臓がんに次いで、第6位となっています。前立腺がんは早期に症状が出にくいために以前は発見が遅れがちでしたが、前立腺がん腫瘍マーカー検査(PSA検査)が導入されてからは、早期に発見することが多くなりました。

 当院での2020年~2022年の3年間の前立腺生検実施数と限局性前立腺がんに対する前立腺がん手術の実施数は下記のとおりです。

診療部長・第一泌尿器科部長 奈路田 拓史

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 202020212022
前立腺生検908156
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術242321
 202020212022
前立腺生検908156
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術242321

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 前立腺生検は過去3年間で227例実施しました。227例の前立腺生検実施症例のうちで、限局性前立腺がん(転移を有しない前立腺がん)と診断された症例のなかで、前立腺がん根治手術を68例で実施しました。3年間で前立腺生検の実施症例に対して、約30%(68/227)が手術による治療を選択しています。

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前立腺がんの治療

 前立腺がんの初期治療の方法として、1.手術治療 2.放射線治療(外照射や組織内照射など) 3.重粒子線治療/陽子線治療 4.内分泌治療 5.積極的待機療法 あるいはこれらの組み合わせがあります。これらをどのように選択するかは、年齢、健康状態、がんの進行状態などを総合的に判断し、患者・家族のかたがたと相談して決定します。遠隔転移を有する進行がんの場合は、上記4.内分泌治療が第1選択となります。 内分泌治療後に再燃した去勢抵抗性前立腺がんに対しては、がん化学療法や、2014年から使用可能になった、アンドロゲンレセプタ標的薬(エンザルタミド・アビラテロン・アパルタミド・ダロルタミド)などの新しい薬剤の治療も可能となっています。また2023年2月からは、アンドロゲン除去療法+がん化学療法+アンドロゲンレセプタ標的薬の同時使用(トリプレット治療)が一部の薬剤で保険承認されています。局所進行がん(前立腺被膜外にがんが伸展)は一般的に、上記2.放射線治療か、上記4.内分泌治療、あるいは上記2と4の組み合わせが選択肢となりますが、症例によっては、上記1.手術治療を行う場合もあります。限局性前立腺がんで、平均余命10年が見込まれる場合には、一般的には、根治治療である、上記1.手術治療 2.放射線治療 3.重粒子線治療 を考慮します。治療侵襲や全身状態医/健康状態を勘案して、上記4内分泌治療を選択することもあります。前立腺生検の結果により、細胞悪性度の低い限局癌の場合は、上記1-4 治療選択肢もありますが、PSA値や定期的な前立腺生検の実施で、病勢の進行したときに、根治的治療を考慮する、上記5.積極的待機療法も選択肢となります。

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当院での前立腺がん治療

 当院では、手術治療として手術支援ロボット ダビンチSi TMを2014年3月に導入し、ロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(RARP)を施行してきました。RARP は現在全国の施設で年間10,000例以上が実施される、標準手術となっています。当院でも前述のように、年間20例以上の RARP を実施しています。2020年12月にはダビンチX TMを導入し、2021年からは新機種による手術を開始しています。放射線治療は、高精度放射線治療システム(リニアック)による外照射を行っています。組織内照射や強度変調放射線治療を希望する症例は、当院では実施できず、治療可能な施設への紹介としています。

  • 局所癌の治療
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RARPについて

 ダビンチサージカルシステムは高解像度3D画像で視野拡大能力があり、開放手術では死角になる部位でもカメラが繊細に映し出し、手術鉗子を自由に動かすことができ、手振れ補正機能を有していることで、きめ細やかな作業性があります。骨盤内の深く狭い空間で、手術が行われる前立腺悪性腫瘍手術などにおいては、より確実な手術が可能です。

 RARP は開放手術や通常の腹腔鏡下手術に比較して、
*低侵襲 : 出血が少なく 手術時間の短縮が期待できる
*制癌性 : 手術でがんをとりきれる可能性が高い(断端陽性率が低い)とされる
*術後の尿禁制の回復がはやく 症例によっては前立腺周囲に走行している神経や血管を温存することが比較的容易で その場合には男性機能(勃起機能)の保持が期待できることもある

 

 また従来の腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術と比較して、比較的少ない経験症例数であっても、術者の手術スキルの習得・維持が可能であると考えられています。
さらに新機種ダビンチX TMとなったことで、術野での操作可動域が拡大し、より繊細な手術が可能となりました。新しい器具(鉗子類)も使用可能となり、手術時間のさらなる短縮も期待できます。

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